- 2008-07-15 (火) 23:59
- その他いろいろ
窮状を訴える漁師の方々のためにも、もっとニュースとして大きく
採り上げてもいいのでは?という気がしますが・・・。
食料の自給率を上げるためにも、政府にしっかりと対策を検討して
ほしいのですが、今の与党と農水省では望み薄いかなぁ・・・。
安易な魚離れだけが怖いのですが、どうも嫌な予感がしますね。
原油高騰に苦しんでいるのはなにも漁業だけではないのですが、
事は国民の日々の‘食’に関すること、中国の件とか偽装の件とか
今年に入ってからも食の安全性を問われる事件が相次いでいて、
それでも苦しい現状を行政・立法から顧みられることが少ないのは
先の諫早湾干拓訴訟の件での対応(国の控訴)をみてもわかる通り。
世界的な食糧危機を目の前にして、漁業を蔑ろにするようでは
イザという時に国民が困るんですけどねぇ・・・>与党・官僚の方々
◆国内漁船20万隻、15日に一斉休漁…燃料高騰対策求め
【読売新聞 2008年7月15日】
世界的な原油価格高騰を受けて15日、国内のほぼすべての漁船約20万隻が一斉に休漁する。漁師からは「燃料のコスト高が続けば廃業に追い込まれかねない」との声も出ており、燃油値上がり分の補てんなどの救済策を政府に求める。
休漁するのは、全国漁業協同組合連合会(全漁連)や大日本水産会など17の漁業団体に所属する漁船。全漁連などによると、漁船の燃料価格は5年前の3倍になっている。
一足早く14日から休漁に踏み切った漁港もあり、宮城県石巻市の寄磯漁港では、漁船に窮状を訴える横断幕が掲げられた。また、全国さんま棒受網漁業協同組合などは14日、サンマの本格的な漁期に合わせ、8月18日に傘下の漁船が一斉に休漁すると発表した。
〔※写真:原油高を訴える横断幕を掲げて一斉休漁する漁師ら(14日午後、宮城県・石巻市の寄磯漁港で)=立石紀和撮影〕
◆全国一斉休漁:燃料高騰で20万隻【毎日新聞 2008年7月15日】
全国漁業協同組合連合会(全漁連)、大日本水産会など主要な16の漁業団体が15日、燃料価格の高騰による漁業者の苦境を訴えるため、一斉休漁に入った。燃料高を理由とした全国一斉休漁は初めて。一部地域を除き1日限りだが、鮮魚の供給がほぼ全魚種で止まるため、魚価に一定の影響が出る可能性もある。
16団体には約20万隻の漁船が所属。国内海洋漁業の大半の漁船が休漁となる。近海漁船だけでなく、マグロなどの遠洋漁船は15日は国内港への水揚げを見合わせるほか、養殖業界も出荷を停止する。
全漁連によると、漁船用A重油の予想実勢価格は、1キロリットルあたり11万5400円と、5年前の約3倍まで高騰した。20トン未満の沿岸漁船の場合、操業コストに占める燃料代の割合は06年に約23%だったのが、最近は30%を超えているという。
一方、魚価は、市場での競りなど需給関係で決まるため価格転嫁が難しく、赤字操業に追い込まれる漁業者が増えている。
政府は07年度の補正予算で102億円の基金を創設し、漁船の省エネ対策などに充てているが、漁業団体や与党などからは、より抜本的な追加対策を求める声が強まっている。
遠洋マグロ漁業団体で国内最大の「日本かつお・まぐろ漁業協同組合(日かつ漁協)」は、8月1日から2年間の部分休漁に入る。サンマ棒受け網漁も、8月18日に一斉休漁する。
◆全国一斉休漁:「最盛期なのに…」漁民らぼやきとため息/市場、消費者は冷静に反応
【毎日新聞 2008年7月15日】
燃料価格の高騰に伴う15日の全国一斉休漁に、九州・山口からも多くの漁業者が参加し、港には漁船が係留されたままになった。中には、最盛期に休漁に踏み切らざるを得なかった漁民も少なくなく、関係者からはぼやきやため息が漏れた。
■これからという時に
山口県沖の日本海は、今がイカやアジなどの最盛期。県漁協はぎ統括支店の長岡利憲参与は「(水揚げは)7月に入って上向いてきた。これからという時だけに本当に複雑です」と話す。
組合員数が約2000人の佐賀県有明海漁協も全17支所が一斉休漁に参加し、川崎守組合長ら約20人の幹部が全国行動のため上京した。同漁協大浦支所(組合員数約270人)では、始まったばかりの夏の竹崎カニ漁を休業。太良町の岡田秀行さん(63)は「軽油は免税しても1リットルあたり116円で、安いころの2倍。近場で漁をしたり、船の馬力を出さないなどの工夫をしているが、燃料代がもっと安くなる政策が根本的に必要」と訴えた。
約60隻が所属する宮崎市の(檍浜あおきはま)漁協の男性漁師(59)は「休業は1回だけではなく、3回、4回と重ねなければ、国に訴えられない」。一方で漁に出なければ、収入が絶たれるとあって、「こんな事態は初めて」と、困惑を隠せない様子だった。■市場、消費者は冷静
福岡市の福岡市中央卸売市場鮮魚市場は15日早朝、競り落とされた鮮魚が仲卸業者の店舗にずらりと並び、普段と変わらない様子。ある仲卸業者は「いつもと入りも変わらない。一斉休漁といっても、明日(16日)は市場も休みだから特別困ることはなさそう」と冷静に語った。
九州内で98店舗を展開する「マックスバリュ九州」(博多区)は「明日は市場が休みだから、多めに仕入れたが、特別な対応は考えていない。ただ、先行きが依然不明で、今後の推移を見て対応を考えたい」と話す。
約120店舗が軒を連ねる北九州市民の台所・(旦過たんが)市場(小倉北区)。鮮魚店を経営する佐川敏明さん(60)は「卸売市場は魚の量、値段とも普段と変わらなかった。14日に漁に出た分が並んでいたからで、影響が出るのは、17日ぐらいからでは」。旦過市場を通って通勤するという洋裁業の女性(73)は「魚が高ければ、肉や野菜でしのぐしかない。成り行きを見据えて賢い買い物をしたい」と冷静だった。
〔※写真:港に停泊中の船で糸や針の補修をして時間をつぶす漁師さんも=福岡市中央区港で15日、田中雅之撮影〕
◆漁業者 背水の訴え 燃料高 全国20万隻休漁
【京都新聞 2008年7月15日】
全国漁業協同組合連合会(全漁連)など主要17漁業団体は15日、全国で一斉休漁に突入した。国内で稼働する漁船約20万隻のほぼすべてが参加し、燃料価格高騰に伴う経営の苦境を国民に訴えた。
漁民によるこれだけ大規模な「全国ストライキ」は初めて。未曾有の原油高が低迷する漁業経営の根幹を揺さぶり、不安を増幅させている現状が鮮明になった。
東京・築地の中央卸売市場では鮮魚類の入荷量が減少し、価格も全般的に上昇した。
一斉休漁は原則、15日の1日だけだが、大阪府の全24漁協は16日も休漁するほか、和歌山県の箕島町漁協は1週間休止する。
東京・日比谷公園では漁民ら約3600人が、燃料費高騰分の補てんなどの緊急対策を政府・与党に求める決起集会を開催した。
全漁連の服部郁弘会長は「燃料費高騰は漁業者の自助努力の限界を超え、廃業に追い込まれる瀬戸際だ。漁業、漁村を守る責務が国に問われている」と対策の早期実施を要求した。その後、霞が関の官庁街をデモ行進し、経営の厳しさを訴えた。■舞鶴、取引額100分の1
京都府漁業協同組合連合会(府漁連、本所・舞鶴市)所属の舞鶴、宮津、京丹後各市と伊根町内の漁協、業種別四団体の各組合員約2500人も15日は一斉休漁。東京都内での決起集会には、約25人が参加した。
京丹後市の丹後町漁協は約120隻が休漁した。佐々木学さん(32)は「エンジン回転を落とし、経費が掛かるイカ釣り漁を近海の刺し網漁に変えるなどしているが厳しい」と頭を抱える。
府漁連は通常通り、舞鶴地方卸売市場(舞鶴市下安久)を午前9時半に開いた。前日までに捕れたブリ、貝が競りにかけられたが、取引金額は普段の100分の1以下。府漁連宮津支所でも、競りが10分程度で終わった。
舞鶴の仲買人によると「カタクチイワシやサワラ、サザエ漁が盛んだが、前日までに仕入れを済ませており、品薄や価格高騰などの影響はほとんどない」という。
府漁連は「燃料費値上げを魚価に反映できない現状を理解してほしい」と訴えている。■入荷量見極めへ 京都市中央卸売市場
京都市下京区の京都市中央卸売市場第一市場は、15日の水産物の競りで大きな価格変動はなかった。ただ全国的な休漁と16日の市場の休場が重なり、「計画的に多めに仕入れている店もある」(業務課)という。
15日の鮮魚全体の入荷量は110トンで普段通りの水準。15日の休漁の影響は軽微とみるが、17日の入荷量を見極めたいとする。■琵琶湖アユ漁も
滋賀県漁連は38組合、約1000隻に休漁を呼び掛け、琵琶湖では未明からアユ漁などの船が一斉に休漁した。
堅田漁港(大津市本堅田2丁目)は、朝から人影もまばら。漁に出る代わりに漁港内で藻の刈り取りをしていた木戸貞二さん(81)は「小学校を出てから漁師をしてきたが、油のせいで一斉休漁するのは初めて。昔ほど魚も取れなくなっているのになあ」と、漁業不振と燃料高騰の二重苦を嘆いていた。
〔※写真:一斉休漁で、出港しない漁船が並ぶ間人漁港(午前8時半、京丹後市丹後町)〕
第139回の芥川賞・直木賞の選考委員会が本日行なわれて
(→日本文学振興会 http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/)、
に決まったそうです。
楊逸さん、井上荒野さん、受賞おめでとうございます。
ちなみに、『時が滲む朝』は天安門事件が舞台になってるそうですが・・・
北京五輪を前にさすが文藝春秋というか意味深というか・・・(笑)。
それから、『切羽へ』は長崎の崎戸(かつて長崎最大の炭鉱があった島)が
舞台になっていて、文中に“アゴ”とかも出てくるんですよね。
思わず「あらぁ~懐かしいィ~」みたいな(笑)。
[“アゴ”はトビウオの干物、ダシに使うと美味しいんですよ]

[MSN産経ニュースより↑笑顔で記念撮影に応じる、芥川賞の楊逸さん(左)と直木賞の井上荒野さん=15日夜、東京・丸の内の東京会館]
◆<芥川・直木賞>芥川賞に楊逸さん、直木賞に井上荒野さん
【Yahoo!:毎日新聞 2008年7月15日】
第139回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考委員会が15日、東京・築地の「新喜楽」で開かれ、芥川賞が楊逸(ヤンイー)さん(44)の「時が滲(にじ)む朝」(文学界6月号)に、直木賞は井上荒野(あれの)さん(47)の「切羽(きりは)へ」(新潮社)が決まった。
楊さんは中国ハルビン市生まれの中国人。芥川賞史上、中国人の受賞は初めて。獲得言語(母国語以外に学んで身につけた言語)での初の快挙は、日本文学をさらに豊かにするものとして、期待と注目を集めそうだ。
楊さんは87年に初来日し、日本語学校やお茶の水女子大で日本語を学んだ。デビュー作の「ワンちゃん」(文学界新人賞)に続き、芥川賞候補は2回目だった。
贈呈式は8月22日午後6時、東京・丸の内の東京会館であり、正賞の時計と副賞100万円がそれぞれ贈られる。
◆【芥川賞講評】「作者の国籍、勘案材料ではない」高樹のぶ子選考委員
【MSN産経ニュース 2008年7月15日】
楊逸氏(44)の「時が滲む朝」に決まった第139回芥川賞の選考経緯について15日、高樹のぶ子選考委員が説明した。
まず岡崎祥久氏の「ctの深い川の町」、小野正嗣氏の「マイクロバス」、木村紅美氏の「月食の日」、津村記久子氏の「婚礼、葬礼、その他」の4つが落ち、羽田圭介氏の「走ル」も比較的早いうちに落ちた末、磯﨑憲一郎氏の「眼と太陽」と、楊氏の「時が滲む朝」が残った。
最初の投票で「時が滲む朝」が高得点を取っており、これを受賞作にするかどうかで厳しい議論をした。
「眼と太陽」は、不条理の世界が意図的にきちんと書かれており、文章もいいという委員もいたが、最終的には「時が滲む朝」に意見が集まった。これを絶対に受賞作にすべきだという意見と、前回で落選した候補作「ワンちゃん」より文章はよくなっているが、受賞はどうかという意見に分かれた。ぜひ受賞作にという意見が2人の委員からあり、最終決選投票をした。石原慎太郎選考委員は欠席で、8人中5人が○をつける形で受賞が決まった。
受賞作の評価は、日本語が前作よりよくなっていることに関してはだいたい一致したが、前作にシンパシーを感じるのに比べて、今回はそれが弱いという意見もでた。また、内容はだれもが知っていることで魅力が足りないという声もあった。内容に物足りなさを感じるという委員もいた。
一方、読み物としてリーダブル(よく読めて)でおもしろいと強く支持する意見があった。まず、作者は書きたいことがきちんとある。次に、国境を越えてこなければ見えないものがある。それが書かれている。全共闘世代が40年前に経験した熱気をこの作品に実感できるという意見があり、私(高樹)もそれに賛成だ。
何よりも、人間が必死で生きている手触りがいまの文学の環境の中で強烈に実感できる。日常生活のストレートな手触りを通して、この作品に新鮮なものを感じた。中国人男性の20年にわたる個人史を書いている。日本人の多くは、こういう個人史を書けるような過ごし方をしてこなかったので、主人公の激動の20年がより新鮮に感じられたのだろう。
(前回候補の)「ワンちゃん」と今回の作品とは素材が全く違う。素材が違うものを、きちんとしたレベルで、前よりもよりよい日本語で書いているということで、芥川賞にふさわしいという結論になった。この作品に関しては、選考委員が一人一人違うというか、感想を持っていると思う。それは、選評で読んでもらうしかないが、最終的にいろんな理由がありながら、受賞作にしようという選考委員が過半数を得て、受賞にいたった。
《質疑応答に入る》
--母語が日本語でない方が受賞するのは初めてだと思います。そういう方を受賞作に選んだことについて
「私一人の感想でいうと、そういうことと一切関係なく選びました。日本語で書かれた文学として、個人史文学として、他の作品よりも圧倒的な力を持っていた。質量のある作品だった。その作者の国籍とか母語とかは、勘案する材料にはなりませんでした」
--最初の投票で2作が残った?
「それは違います。さきほど申した作品が、順番に落ちていったということ。最後にのこったのが、『眼と太陽』と『時が滲む朝』です」
--点数は?
「具体的に点数は申し上げられない」
--日本語の表現は、日本の作家におとらない?
「もちろんそうでないと、芥川賞は難しいですから。日本語として、読んでいる。中国籍、中国語が母語の方だからという手加減というか、プラスアルファはありません。あくまで、日本語として。前回は、それで、いろいろクレームはついたけど。(今回も)難色を示す委員はもちろんありました。日本語としてステップアップしてほしいというのはあったけど、個人史を書いた作品であり、その文体としては、その欠点もあまりめだたないということでした」
--『眼と太陽』については?
「トーリという女性の魅力が、いまひとつ足りないのではというのが、私の意見です。この作品は、意図的にバラバラに書いている、確信犯的に書いているとする選考委員がいた。文章がしっかりしているという点は全員が共通していました」
--楊逸さんの作家性について
「前の作品は、日本語としてあっちこっちひっかかってきたが、今回は、スムーズに読める。文章がもっている基本的な機能ができている。多少定型的な言い回しとか、通俗的な言い回しは私も気になったけど、自分の文章能力で可能な素材をこの作者は選べる。才能だと思います。一人の男の歴史というものを書いていくというところでは、文章の弱さが目立たない。むしろそれをカバーする心の情報のようなものが、確保されているということで、ぜひ芥川賞にしたいという気持ちを私も持ちました」
--母語は関係ない?
「あくまでそこに書かれている世界を、どう評価するかです。文学作品として結果として、これを書いた人が、どういう人か、母語がどういう人かは、あとでわかってくること。日本は、この20年下り坂で、どん詰まりにまできている。この20年をこんなふうに、いろんなものに、ぶつかり抵抗し、挫折しながら変節しながら、生き抜いている人が、隣の国にいるということは、新鮮な感想を持ちました」
◆【芥川賞一問一答】「日本の若者、 挫折が足りない」楊逸さん
【MSN産経ニュース 2008年7月15日】
第139回芥川賞を受賞した楊逸(ヤン・イー)さんは15日夜、東京・丸の内の東京会館で記者会見し、喜びを語った。報道陣との一問一答は以下の通り。
[↑第39回芥川賞を受賞した楊逸さん(左)=15日午後、東京・千代宇田区の東京會舘(大西史朗撮影)]《楊さんは、銀色のラメが光る紫色のワンピースに白いハイヒール姿で登場、やや紅潮して着席。会見は日本語で行われた》
「皆さんこんばんは。楊逸と申します、このたび日本で小説を評価していただきましたこと、すごい感激しています。受賞できたことをすごいうれしく思っています」
--中国人として初めての芥川賞受賞ということですが、どういうふうに受け止めますか
「すごい幸せ者だなあと思いました」
--中国が舞台の作品ですが
「そのこともうれしい。この小説を書くについて、私、いろんな思いがあって、それを書いて評価していただいたということに感動しています。小説に入っている思いというのも、皆さんに伝わったかなと思っています」
--受賞の知らせを受けて、家族はなんと
「受賞してから連絡したのは妹だけです。九州に住んでいます。妹には『勘違いではないのか』と言われまして、一瞬私もそう思いました」
--子供たちは
「子供たちは喜んでいました。『よかったねー』って」
《初めて緊張が解けたように、笑顔となる》
--作品で一番言いたかったのは
「中国で約23年育ったのですが、日本へ来てから、他の国で自分の国をみたその感覚を書き込んだ。たぶんそれを評価していただいたのかなと」
--この小説を翻訳して中国の人に読んでほしいですか
「もちろんです」
--天安門事件が描かれている。中国の人にとっては大変な事件だと思います。それをテーマの一つに選んだのはどういう理由から?
「私が今まで生きてきて、私自身に一番影響を与えたことだと思っています」
--どのような影響か
「天安門事件をきっかけにしていろいろなことを考えるようになりました。私自身何のために生きているのか、とか大きくなっちゃうのですが、他人と個人との関係とか。ふつうこのようなことがなければ考えることはなかったのかなと思いました」
--今なんのために生きていると思うか
「それは答えはなかなか出ないですね。いまだに出ません」
--今回の受賞は、小説を書く上でどういう影響があるか
「去年文学界新人賞を受賞したときもうれしかったんですけれど、私自身満足していましたけれど、こういうふうなかたちで評価していただいて、もう、日本にとけ込んだような感覚がしました。素晴らしい賞を裏切らないように、これまで以上にがんばっていかないといけないなと思います」
--中国語でひとこと
「(中国語で)とてもうれしいです」
--日本語が良くなったと前作に比べても評価があったが
「素直にうれしく思っています。中国人でなく、作品に対して評価をしていただきました。私は日本語を母国語としていないのですが、賞をいただいたからといって満足するのではなく、これからも日本語を勉強します。日本語で書くということは終わりなき仕事だと思っています」
--主人公のモチーフは実在するか
「いないです」
--祖国に対する楊さんの思いは
「私もひとりの中国人なので、中国にはもっと良くなってほしい。その思いは私だけではなく、すべての中国人が持っていると思います。最近は大変な事件がいろいろあったのですが、あくまでも目標に向かっている途中にすぎないと思っています」
--中国語でも書いていると思うが、日本語でないと表現できないことはあるか
「日本語でなければならないというのはないですね。中国語でなければならないというのはある」
--今後どんな作品を書きたいか
「(しばらく沈黙して)あの、基本なんですけれども、何か社会にプラスになるような作品を書けたらいいなと思う」
--作品に漢詩を多用しているが、漢詩は得意なのか
「え。(笑って首をすくめて)そうではないけれど。好きです。はい」
--漢詩の出来映えは
「私なりに力を出して書いたつもりですけど、今のところ満足とは言えなくて、あと10年くらい経って、そのとき満足していたら本当にいい詩だと思います」
--中国がもっと良くなってほしいと言ったが、どういうところか。
「どういうところというと…すべてみんな幸せであればいいなと思います」
--民主化運動が装甲車によって押しつぶされた天安門事件に関して、楊さん自身は挫折感はあるのか
「えー(しばらく考え)。すごい複雑なんですけれども、挫折感も多少はあると思います」
--自分の作風といったものは、日本のどういう作家から影響を受けたか
「難しい質問ですが、これまでに読んだ日本語の作品すべてから影響を受けています」
--特にどんな作品か
「筒井康隆さん」
--作品名は
「『文学部唯野教授』とか」
《場内、笑いに包まれる》
--日本の若い人たちをどうみるか
「すごい幸せだなと思いますね。幸せすぎて挫折が足りないかなと思います」
《場内、さらに大きな笑いに》
--挫折が必要か
「(笑いながら)すごい必要だと思う」
--楊さんが日本社会、日本人のことをどう見ているかを小説に書くアイデアはあるか
「内容にもよりますが、私がみた日本、あるいは体験した日本をそのまま書きたいと思います」
--いちばん好きな日本語を教えてください
「好きな日本語(大笑いしながら)。いちばん私が好きな日本語…言っていいですか、(両手を挙げ、こぶしの上に手のひらをのせ)足のここをですね、土踏まずと言いますよね、土踏まず。あれはすごく笑える。すごく感動しました」
《場内大爆笑》
--受賞までどんな気持ちだったか
「自宅で過ごすつもりだったけれど、ソワソワしました。お母さんと2人でおしゃべりしながら、もう眠れませんでした」
--偶然だと思うが、北京五輪の年に受賞できたことは
「すごい、縁を、感じます」
--楊さんが見た日本を描くとき、主人公は純粋な日本人か、それとも日本人以外か
「主人公は、純粋な日本人だと私が書くのは難しさがあると思う。書けたとしても説得力はないかもしれない。日本人は出てくるのではないでしょうか。書いてないので言えません」
--中国語の講師を続けるのか
「作家専業という道はもちろんあると思うが、作家というのは人と接しないと書いたものは青白くなるのではないでしょうか。働き続ける道もあると思います」
--書き続けるために重要だと。
「重要だと思います。勉強したい方は(笑い)どうぞ」
《笑い》
--日本は好きですか
「好きです」
--具体的に好きなところがあれば
「(笑いながら)こういうふうにまっすぐな質問をされるところです」
--テレビのライトなどをこうして浴びて
「すごい緊張します」
--中国語の授業はどこで受けられるのでしょう
「直接言わせてください」
--作品を読んでいると必ずどこかで笑ってしまうが、笑いを心がけているのか
「私の体質みたいな感じですね。皆さん私をみて笑いたいんでしょう」
--今回、日本語はだれかからアドバイスを受けながら書いたのか
「書き終わりまして、編集者の方にアドバイスをいただきまして、何回か手直しをしました」
--受賞作は3作目ですね
「そうですね」
--どのくらい時間をかけましたか
「デビュー作は2週間ほどでしたが、今回は3カ月でした」
--2週間。6倍?
「そうです。今回は力をいれました」
--デビュー作は2週間
「そうですね、短い方がすべての情熱をかけられると思います」
◆【直木賞講評】「文学のイロハがほぼ完璧」平岩弓枝選考委員
【MSN産経ニュース 2008年7月15日】
井上荒野氏(47)の「切羽へ」に決まった第139回直木賞の選考経緯について15日、平岩弓枝選考委員が説明した。
講評の過程は、第一次審査で井上荒野、山本兼一、和田竜の3氏が残り、決選投票に持ち込まれ、非常に競ったが、最終的にすんなり井上さんが満票で決定した。
主人公の女性が夫と若い男性の間で行ったり来たりしている様子は、セックス描写をおさえた分、逆に官能豊かな作品に仕上がった。構成、人物ともしっかり描かれ、方言と標準語を巧みに使って不思議な効果をもたらしており、文学のイロハがほぼ完璧である。
井上さんには今後も思い切って書いてほしい。せわしない世の中にあって、実にゆったりストーリーが進む心地よさがいい。インパクトや素材の面白さについ飛びつく傾向にあるが、堂々と正道を歩く人間模様を見事に書き抜いてほしい。
山本、和田両氏は歴史、時代小説を書いているが、歴史をどう見るかや時代考証など従来の歴史認識の基準からかんがみると、少々の難がある。だが、この分野の書き手が少ないからこそ、お二人とも貴重な存在で今後に期待したい。
三崎亜記さんは着想の面白さ、若い感性が眼を見張るものの、まだ読者を感動させるほどの熟成が感じられず、不満が残る。
荻原浩さんは、好感度は非常によかったものの、新聞連載が一冊の本になったとき前半と後半でアンバランスが感じられる。座敷わらしの書き方も誰もが抱くイメージの域を出ておらず新鮮味がない。また、都会から地方転勤になった家族が素直にまとまっており、インパクトに欠ける。
新野剛志さんは、素材の面白さがあるが、まだ小説として未熟であり、もう一回読んでみたい。
◆【直木賞一問一答】「根性なしの人間 やめなくてよかった」井上荒野さん
【MSN産経ニュース 2008年7月15日】
第139回直木賞を受賞した井上荒野さんは15日夜、東京・丸の内の東京会館で記者会見し、喜びを語った。報道陣との一問一答は以下の通り。
《井上さんは黒のインナーに白いジャケットを羽織り、やはり黒のパンツ姿で登場、やや頬を紅潮させて着席》
--まず受賞の感想を
「今日はどうもありがとうございます。私はデビューしたのはもう二十数年前。江國香織さんと同じ雑誌でデビューしたんです。2つの本を出してから、12~13年、次の作品が書けず、注文もこなかった。筆を持てない時期がありました。最近やっと、どんどんお仕事をさせていただけるようになった。根性なしの人間なので、書けない時期を過ぎて、今でも書いているのが信じられない。こうして賞をいただいて、すごくうれしいです。他にうまく言えないけれど、小説を書いてきてよかった、書くのをやめないでよかった」
--「人を見る目」が評価されたが、どのように養ったのか
「書けない時期に、いつかは書けるようになる、でもどうやったら書けるだろう、と。
書かないと書けるようにならない。人を見る目を評価されたとしたら、何作も書いてきたことで、できるようになったんじゃないかなと思います。人を見る目とは、『自分と小説を書く関係』--自分は何のために小説を書いているのか、何を書きたいのか--という関係だと思う。それは書きながらわかってきた」
--お父さんが生きていたら
「父は芥川賞の候補になったことがあったが、もう新人ではないという理由でだめだったと私は聞いています。それ以降、どんな賞も受けないと言っていました。私が賞をとったことは、たぶんものすごく喜ぶでしょう。狂ったように喜ぶのは確か。でもそういう立場を取っていたので…。言動があやしくなるでしょうね」
--お父さんのふるさとを舞台にしているが
「父の故郷ですが、父は私を生前連れて行ってくれませんでした。私の中では(長崎県の)崎戸に関しては、暗くて怖い島だというイメージをもっていた。炭鉱も知らないし、書けないと思った。父が死んだ翌年に行ったんですけど、当たり前ですが炭鉱はなく、廃墟が残っているような感じでした。でも、暗いというよりも、陽光がふりそそいで、ぱーっと白く輝いて見えた。これなら私も書けると思った。私にしか書けない小説が書けると思った」
--仲良しの江國香織さんの反応は
「『きゃーっ』て。彼女は待っている時から一緒にいてくれました」
--人間関係がどっちにころんでもおかしくない小説が多いが
「私は人間関係とか、幸せとか不幸せとかにものすごく疑ぐり深い。育った環境にもよるのかもしれない」
--お父さんの故郷を舞台にした小説で受賞したことに関して
「たまたまというしかないですね。でもちょっとうれしいことでもある。できすぎてるんですけど、この本が刊行された日がうちの父の命日でした」
--以前、書けなかった理由は
「父が小説を書いていたからでしょう。私と小説との関係は、私と父との関係に重なる」
--今後どんな作品を
「具体的にはわからない。やっぱりずっと私は自分を退屈させない小説を書こうと思っていて、読者の人には悪いですけど。読者が喜ぶかなと思っても、自分にとって退屈だったら書かない。そういうことを大切にしたい。人間を書くということが基本。遠くから見ると男、女、若い、みたいなかんじだけど、人は皆、1分1秒だって違う。そういう目線で書いていきたい」
--受賞の知らせはどのように?
「長く仕事をしていっぱい本を出しているので、仲良しの編集者36人と、イタリアンレストランにいました。受賞の知らせはお店にかかってきて、私がみんなにピースして知らせると、歓声で電話が聞こえないくらい大騒ぎになりました。最初に抱き合うのは夫だと思っていたのでガバッとやって…」
--井上さんにとって夫婦とは、だんなさんとは
「基本的に夫婦という形式は信用してないんですよ。何かが約束されるとは思っていない。そのことと、私が夫をいとしく思っていることとは別です」
--「性の表現はないけど官能的だ」という講評に対して。官能とは
「それはやっぱり、男女間の愛、異性に向ける愛情は、何か行為がなくても、いとおしいと思うだけで官能的だと思う」
最後に、金利据置となった日銀の金融政策決定会合について。
◆景気見通しは下振れ、09年度には成長率回復へ=日銀総裁
【ロイター 2008年7月15日】
[東京 15日 ロイター] 白川方明日銀総裁は15日、金融政策決定会合後の記者会見で、景気の現状について、4月の見通しに比べ、原材料価格が一段と上昇し、これが経済・物価の両面に表れているとの判断を示した。
もっとも、スタグフレーションには突入していないとし、交易条件の悪化が止まれば成長率を押し上げる方向に働くとして、2009年度には成長率が回復していくとの見通しを示した。このため、金融政策としては、先行きの姿と政策のタイムラグを考えれば、利下げする必要はないとの認識を示した。世界の中央銀行が利上げ方向に動いていることについても、現在は協調しないことが望ましく、日銀としてできることは現状分析し、情報発信していくことだと述べるにとどめた。<景気下振れの最大の要因は交易条件の一段の悪化>
今回の決定会合では、4月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の見通しを点検し、中間評価として公表。新たに成長率と物価見通しの数値を四半期に1回公表することとした。白川総裁は「現在のように経済物価の不確実性が高いときに、より充実した情報発信ができるように体制を整えた」と説明。長期にわたり金融政策の変更ができない中で現状維持が適当だと判断した理由について、迅速に市場に説明して納得してもらえるよう、説明責任の充実に取り組む姿勢を打ち出した。
今回中間評価として政策委員が検討し直した数値見通しでは、成長率が4月より下振れして08年度は1.2%にとどまり、潜在成長率にも達しないとの予想となった。白川総裁は「今回の下振れの最大の要因は交易条件の悪化」と説明。これが企業収益や設備投資に影響、個人消費も伸びが鈍化しているとした。「スタグフレーションに入ったとは判断していない」としながらも、「景気は下振れリスクに注意する必要がある」と警戒感を示した。
もっとも、中間評価では、09年度の成長率は1.5%とやや回復に向かう見通し。
現在の資源価格の高騰が収まらずに交易条件の悪化が広がっている中で先行きなぜ回復に向かうのか、その理由を問われた白川総裁は「資源価格は今後も新興国を中心とした世界経済の成長が続くため、高水準で推移するとの見方を前提としており、これ以上上がりも下がりもしないと想定している」と説明、「交易条件の悪化が止まれば成長率を上押しする」との見方を示した。
もっとも、新興国の需要の増加や供給制約、それにマネーの流れなどの要因が絡んで資源価格の上昇が止まらない状況の下で、なぜこれ以上上昇しないとみているのかという点についての十分な説明には至らなかった。<利下げの必要なし、できることは現状分析のみ>
08年度に経済成長率が潜在成長率を下回る見通しを示し、景気がさらに下振れすることに注意するとした以上、利下げの選択肢も議論された可能性があるのではないか、との疑問もわいてくるが、白川総裁は「日銀としては金融政策の効果発現までのタイムラグを1年半から2年程度とみていること、また先行きの経済・物価の姿を展望しながら判断すると、今ここで政策を変更する必要はない」との判断を示した。
一方で、物価の見通しは4月より上振れとの判断を示したことについては、国際商品市況の上昇から波及してインフレ期待の高まりから2次的な値上げが起こるというような「セカンドラウンド・イフェクトは現在のところ起きていない」との認識を示した。したがって「金融政策で対応しなければならないことはない」としたが、「今後そうした物価上昇が起きないか丹念にみていく」とし、「中央銀行としてインフレリスクに対しても決して鈍感ではなく、十分認識しているということを情報発信していく必要がある」とも述べた。
各国中央銀行はインフレ懸念の高まりから利上げ方向に動いているが、白川総裁は「現在は中央銀行間でいわゆる政策協調は望ましくないというのが多数説」と述べ、他国と協調して利上げする状況にはないとの考えをにじませた。その上で「やれることは現在起きていることを分析し、世界に向けて情報発信していくこと」とした。
◆白川日銀総裁記者会見の一問一答【ロイター 2008年7月15日】
[東京 15日 ロイター] 白川方明日銀総裁は15日、金融政策決定会合後に記者会見を行った。詳細は以下の通り。
──決定会合の結果について、経済・物価情勢の展望(展望リポート)の中間評価と新しいコミュニケーション手段を含めて説明していただきたい。
「(前略)本日は金融政策運営上の情報発信の充実に関して新たな措置を決定した。金融調節方針の決定の背景については、今回から2つの柱に基づく点検結果を示すこととした。まず、第1の柱についてそのポイントを説明すると、日本の景気はエネルギー・原材料価格高の影響を背景に設備投資や個人消費の伸びが鈍化するなど、さらに減速している。短観などでみた企業の業況感は引き続き慎重化しているほか、先週の支店長会議でも減速感が強まっているという報告が多く聞かれた。もっとも、先行きは当面減速が続くものの、その後、海外経済が徐々に減速局面を脱し、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れてくるにしたがって次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は足元1%台半ばとなっている。先行きは当面上昇率がやや高まった後、徐々に低下していくと予想される。このように日本経済は物価安定のもとで、持続的な成長を続ける可能性が相対的に高いと判断した」
「4月の展望リポート公表時と比べると、原油をはじめとするエネルギー・原材料価格が一段と高騰しており、この影響が経済・物価の両面に表れていると思う。このため、今回の中間評価では2008年度を中心に成長率は幾分下振れる一方、物価は国内企業物価、消費者物価とも上振れると予想した」
「第2の柱についてリスク要因をみると、国際金融資本市場は不安定な状態が続いている。米欧金融機関の損失拡大懸念、世界的なインフレ圧力の高まりなどを背景に、各種の信用スプレッドが再び拡大しているほか、株価も引き続き下落している。米国経済は停滞しており、世界経済には下振れリスクがある。国内民間需要については、国際商品市況の高騰に伴う所得形成の弱まりから下振れるリスクがある。このように、景気の面では下振れリスクに注意する必要がある。一方、物価面では、原油など国際商品市況高を背景に世界的にインフレ圧力が一段と高まっている。日本の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要。この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる」
「次に、金融政策運営の考え方について。日本銀行としては、金融市場の安定を維持すると同時に、経済・物価の見通しとそのがい然性、上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて機動的に金融政策運営を行っていく方針」
「最後に、情報発信の充実に関しては4つの措置を実行することを決定した。すなわち、第1に毎回の決定会合後に2つの柱に基づく点検結果を公表すること、第2に展望リポートの見通し期間を延長すること、第3に政策委員の見通し計数とリスク・バランス・チャートを四半期毎に公表すること、第4に議事要旨を常に次回会合で承認の上公表すること。これらの措置の狙いは、2006年3月に導入した金融政策運営の枠組みに沿って経済・物価の現状と先行きおよびリスク要因について適時かつ丁寧に説明することだ。日本銀行としてはこうした施策によって、現在のように経済・物価の不確実性が高い状況のときも含めて、より充実した情報発信を行うことができる体制が整うと考えている」
──インフレ圧力があり、景気下振れのリスクがあるというが、スタグフレーションと考えているのか。
「スタグフレーションの局面に入ったとは判断していない。日本の景気はさらに減速しているが、先行き、当面減速が続くものの、その後、次第に緩やかな成長経路に復していくと見ている。物価面では、消費者物価は当面、上昇率がやや高まると思うが、その後は、原材料価格高の押し上げ効果が縮小することから、徐々に低下していくと予想される。日本経済は引き続き、物価安定のもとで持続的な成長を続ける可能性が相対的に高いと考えており、その上でスタグフレーションの局面に入ったとは判断していない。こうした見通しには不確実性が大きい。したがって、景気の下振れリスクと物価の上振れリスクの双方に注意が必要な局面と考えている」
──中間評価での原油価格の見立てを聞きたい。
「原油など国際商品市況高騰の背景だが、第1に新興国の高い成長による需要増加の要因、第2に地政学的リスクや産油国の供給制約の要因、第3に投機的な要因、に大きく整理されると思う。中央銀行間での議論を総合すると、私自身もそうだが、基本的には需給バランスというファンダメンタルな議論に着目したものが多いと思う。最終的にはこれら要因のすべてが絡んでおり、先行き見通しについて私が予想を述べることは多分適当でないし、あまり意味がないと思う。先ほど需給バランスを中心に考える見方が多いと申し上げたが、私どもの見方も、現在の現在の原油価格上昇の背景には、基盤として新興国を中心とする世界経済の成長が続く可能性が高いという判断がある。今回の中間評価では、そうした需要に支えられて、国際商品市況は先行きも高水準で推移すると想定している。つまり、この先、どんどん上がっていくとか、この先下がっていくということは想定せずに、高水準で推移するという想定を立てている」
──米国では危機的な金融経済状況だ。政策金利据え置きという判断だが、その根拠は。
「金融政策は、各国自らの置かれた経済・物価情勢に即して判断している。日銀の判断は、先ほど申し上げた通り。もう一度申し上げると、金融政策の判断は、金融政策の効果・波及にはかなり長いタイムラグがあることを十分踏まえる必要がある。ラグの長さについてはもちろん色々考えられるが、だいたい1年半から2年程度となる。従って、先行き1年半から2年程度の経済の姿、物価の姿を展望しながら今の政策金利の水準を考えていくということになる」
「景気の姿をみてみると、足元はさらに減速しているわけで、しばらくこの局面が続くが、その後は徐々に緩やかな成長経路に復していくというのが景気判断だ。一方、物価については、先行き上がっていくが、その後は低下をしていくということで、この景気の姿、物価の姿を想定すると、現在ここで金利水準を調整する必要はないということである」
「ただ、繰り返しになるが、景気についても物価についても方向の異なるリスクがあるので、そのことは十分に認識し、我々が想定した経済・物価の経路に変化がないかどうか点検しながら金融政策を運営していきたいというのが、きょうの決定である」
──景気判断を下方修正した要因と米国経済の見通しについて。
「(略)足元さらに減速していることの一番大きな原因は、交易条件のさらなる悪化だ。交易条件が悪化すると、当然、企業収益は圧迫される。今回の短観でもそうした姿が出ている。その結果、設備投資にも影響が出てくる。特に大企業製造業は比較的堅調だが、中小企業には設備投資の増勢の鈍化という傾向がより明確に出てきている感じがする。個人消費は雇用所得の伸びと交易条件の悪化による購買力の低下という2つの要因がある。両方の要因から個人消費は伸び悩んでいる」
「米国経済の基本的な流れを見ると、資産価格と金融市場、実体経済のマイナスの相乗作用が、いつどのようなかたちで収束に向かうかが大きなポイントだが、なかなか見極めがつきにくい状況だ。現在、住宅投資はマイナスで推移し、設備投資、個人消費についても基本的に弱い。回復の時期については、従来の2008年末から2009年にかけて徐々に成長率が上がっていくという見通しが、少しずつ後ずれしている感じはある。現在は標準シナリオから、ある程度の下振れリスクを意識しながら米国経済を見ているというのが、きょうの決定会合における委員の大方の判断だったと思う」
──米国政府住宅金融機関(GSE)支援策の評価と、情報公開見直し関連で金融経済月報が翌営業日になったが、なぜ当日ではなく翌日なのか。
「(前略)米当局は2つのGSEが米国の住宅金融制度や金融市場において重要な役割を担っているということを踏まえ、必要な対応を進めたと考えている。日本銀行としては今回のこの措置が米住宅市場や金融市場の安定化に資するということを強く期待している」
「月報の発表が翌日にずれることについては、従来、日本銀行の金融政策決定会合後の発表の仕方をみてみると、金融政策に変更があった場合、あるいは変更がなかった場合、その事実を伝えていた。変更がなかった場合には、金融政策をなぜ変更しなかったかということについての説明文書というのは実はなかった。毎回、経済・物価、金融政策に関する説明はあったが、なぜ政策を変更しなかったかということについての政策としての説明が必ずしもなかった。その点は毎回記者会見で私が口頭で説明はしていたが、これを文書の形でしっかり説明することが大事だと判断して今回は経済・物価情勢についての見通し、リスク、それから政策の考え方というのを先ほど申し上げた形式で発表することにした。そういう意味で、私どもとしては情報の中身において充実が図られたと考えている」
「金融経済月報の説明はそうした判断の背後にある細かな説明。その意味で、判断を裏付ける補完的な参考資料としてこれからもこれは執行部のリポートという形で発表するが、われわれとしてはもっとも大事な基本的な政策判断と、その背後にある経済・物価の見方についてはこの文章にしっかり書いたということ。実際、決定会合の議論を考えてみると、いろいろな議論を最後の最後までやっているわけで、そうした結果をすべて金融経済月報に反映させようとすると、どうしても時間的に間に合わないという面がある。1日のずれは発生するが、しかし、最も骨格となる部分については即座に発表することにした」
──設備投資の減速に加え、既存の工場とか生産拠点の減産だとか設備の休廃止といった動きも徐々に出てきている。この辺の影響はどの程度みているのか。
「足元の生産の動きをみると、1─3月が前期比小幅のマイナス、4─6月は今の予想係数を前提とするとやはり小幅のマイナスということで、生産は足元大きなマイナスではないが、減少基調と思っている。そうした動きは今回、景気がさらに減速しているということを裏付ける1つの材料として認識している。設備一般については、設備については新規の投資と設備が除去されていく、あるいは減耗していくということで、最終的に資本ストックの伸び率というものはいつも重視している。資本ストックの伸び率と、毎年毎年のフローとしての設備投資の伸び、このバランスは資本ストック循環という言葉でより重視して毎回点検している。現在、資本ストック循環の面で設備投資が増えていく局面ではない。どちらかというと、資本ストックが積み上がっていって、その面から投資の伸びがどちらかというと減衰していくという局面ではあるが、大きな変化がここにきて起きたとは認識していない」
──第1の柱、第2の柱の扱いについて如何。原油価格の見立ては楽観的過ぎるのではないか。
「第1の柱は、将来を展望して、最もがい然性が高い見通しを点検していく。最もがい然性の高い見通しが、物価安定の元での持続的な成長という目的にかなっているかどうかを点検する。第2の柱は、それ以外の見通しを、リスクという観点から点検していこうということ。2年前の発表文書、その後の当時の福井総裁の記者会見、政策委員会メンバーの講演等にも書かれているが、そこではいくつかのことが書かれていた。1つは展望リポートの見通し期間。2年だが、この2年を超えて、もう少し長い期間の中で実現する見通し、これについての点検。もうひとつは、見通し期間の中であっても、確率が低くても、起きた場合にはコストが大きいというリスクも点検しようということ。いずれにせよ標準的シナリオと、それ以外のシナリオに伴うリスクというものを点検しようということだ」
「その観点から現在の見通しをみると、まず中心的なシナリオは、これまでの見通しと比べると、下方に修正されている。しかし物価の方は上方に修正されている。景気と物価の先行き2年間の中心的なシナリオが、物価安定の元での持続的な成長という目的の範囲の中に入ってくるかどうかを点検すると、今回は入っていると判断した。しかし上下にリスクがあるので、それを点検していこうということ。多分、ご質問は、ここで挙げているリスク要因を反映させると、もう少し、がい然性の高いシナリオが、もっと低くあってしかるべきではないかというのが趣旨と思うが、私どもとしては今回、足元におきている色々な下振れ要因を反映させた上で、標準的シナリオについても、先ほど申し上げたような判断にたった」
「原油価格の想定が楽観的でないかとの指摘だが、振り返ってこの3─4年を考えてみると、原油価格がずっと上がってきたが、その間に多くの中央銀行、国際機関、エコノミストを考えてみると、確かに原油価格の上昇はしばらく続くかもしれないが、しかし、この先、どんどん上がっていく、100ドルを超えるとか、150ドルに接近していくとかということを、2年前の展望リポートで、標準的なシナリオと想定して予測をたてることが適切であったかというと、私は必ずしもそうは思わない。あえて強いポジションをとらずに、現在の高い水準で推移すると、まずシナリオを立てることが、多分、責任ある政策当局者としての予測の立て方かなと思う。けして楽観的ということではない」
──今後、物価がさらに上振れた場合に日銀がとり得る政策手段は何か。また、世界経済にとってインフレが大きなリスクとなっている中で、各国中銀が協力できることはないか。
「足元、エネルギー価格、原材料価格が上がってきており、この先、消費者物価上昇率はしばらく上がっていくと見ている。どの程度上がるかは、いろいろな見方があるが、物価安定という場合には、中長期的に見て持続し得る物価の安定かどうかが最大の判断ポイントになる。今の物価上昇を考えると、明確に要因分解ができるわけではないが、国際商品市況の高騰による直接的な上昇の部分がかなり大きいと判断している。逆に言うとセカンドラウンドエフェクト、つまり輸入コストが上がり、その結果、先々の予想インフレ率も上がり、それがいろいろな賃金・物価形成に組み込まれ、その結果、物価がさらに上がっていくという状況は現在のところ起きていない。しかし、いろいろなデータを見てみると、例えば家計の予想インフレ率が少しずつ上がってきている。これは、購入頻度の高いものに影響され、いわゆるエコノミストがいう予想インフレ率が上がっているかは、若干、割り引いて考える必要はある。ただ、少しずつ家計の物価観が変わってきている可能性もあり、企業の価格設定態度が少しずつ変わっていく可能性もある。従って、セカンドラウンドエフェクトがこの先、起きていかないかどうか、丹念に見ていく必要がある。(セカンドラウンドエフェクトは)現在は起きておらず、金融政策で対応しなければならないということではない。仮に(物価が)上がった場合、中央銀行の金融政策の目的は物価安定の下での持続的成長ということであり、そうした観点から景気と物価の状況を点検して判断することに尽きる。その間、中央銀行は景気の下振れリスクと物価の上振れリスクの両方について、きちんと認識していると伝えていくことが大事だ。常に情報を発信していく必要がある」
「政策協調については、各国が政策金利を同じように動かすという意味での政策協調をこれまで各国がやってきたわけではなく、そうした政策が望ましいとも思わない。かつてプラザ合意の後、いわゆる政策協調という議論が盛んな時期があったのは事実だが、現在、中央銀行間、学会においてもいわゆる政策協調は望ましくないというのが多数説と思う。これは金利を一斉に各国が調整するという意味での政策協調を否定する議論だが、各国が十分に意思疎通を図ることの重要性を否定しているわけではない。十分に意思疎通を図ることは非常に大事であり、その意味での協調は格段に強化されている。中央銀行にできることは、現在、起きていることの性格を中央銀行なりに適切に分析し、世界に向けて情報発信すること。さきほど国際商品市況の上昇の背景は何かと申し上げたが、いろんな商品の全て上がっているということは、単純に考えると、世界全体として需要と供給のバランスが需要超過に傾いているということだと思う。その結果、交易条件が改善した国は景気が過熱する、悪化した国は後退するということになる。景気が過熱した国では、金利の調整が必要であるという議論が強くなり、現実にそういう方向に動いている。そういう意味で、中央銀行が全く無力というわけではなく、中央銀行サークル全体としての努力もしていると思う」
──GSEが発行する債券を各国中銀が外貨準備のために相当程度保有しているとの指摘がある。日銀は現状どうなのか。
「日本銀行は外貨資産の運用に当たっては、中央銀行資産としての性格を考え、高度な安全性と流動性を確保することを目的としている。こうした考えの下で、運用対象資産は、第1に主要国の国債を中心とした高い安全性と流動性を備える債権、第2に主要国の中央銀行に対する預金等高い安全性を備える預金、第3に高い安全性と流動性を備える金銭の信託にかかる信託財産としている。運用対象資産の詳細についてはこれまでと同様、金融・為替市況において無用の憶測を招くおそれがあるので、コメントすることは差し控えたい」
「GSE債一般の話は、今回、米当局はこの機関が非常に重要な機関であるという形ではっきりとした支援の姿勢を示したということ。もちろん、市況なので日々変動するが、きのうのニューヨーク市場をみても、GSE債券についてはむしろ信用スプレッドは若干縮小したと理解している」
──実質GDP見通しについて。2008年度の政策委員の大勢見通しの中央値は1.2%となっているが、昨年後半の成長率が高かったこともあり、現在、成長率のゲタは1.2%ある。そうすると、今走っている年度はまったくゼロ成長になってしまうような予測になっている。こういった成長は緩やかな成長と言えるのか。日本経済はかなり土俵際まで追い込まれているのではないかということが数字からは読み取れる。2009年度も1.5%成長ということで、1%台半ばから後半の潜在成長率のかなり下限の方にあるということも含めて答えて欲しい。2点目は原油について。現在程度の高水準の価格が続くと言ったが、現在、中小企業を中心に現在程度の価格でもかなり倒産が増えたり採算面が厳しい企業が増えてきている。現在程度の原油高が続くのに、来年度にかけて成長率が上がっていくというのは、生産技術が改善するとか数量がさらに出て行くとか、何かきっかけみたいなものがないとなかなか描けないと思うが、このあたりに関してどうか。
「まず最初の質問から。今回、数字を公表するときに、数字というものをどういう風に位置づけるのかということを随分と議論した。われわれが展望リポートを公表してから一貫して申し上げていることだが、経済・物価のメカニズムを中心に説明していきたいと。なぜ、そう申し上げるかというと、数字は非常に大事ではあるが、過去の実績をみてもそうだが、データの改定がしばしば起こる。したがって、ある時期、そのとき利用可能な数字を基にいろいろ議論していたことが、少し時期がたってみると、実はその議論があまり意味がなかったということもよくある。有名な例だが、米国で2003年にデフレに突っ込む危険があるということで、PCEデフレーターが1%を切った数字で、これがデフレ懸念ということで心配されたが、しかしこれは事後的にはずいぶんと上方改定された。もちろん今、同じことが起きているということを言うつもりはまったくないが、私どもとしては数字とリスクバランスチャートはあくまでも参考としてみていただきたいと。中心は本文の文章の見方であると申し上げている。そういう趣旨だ」
「あまり技術論というか、数字そのものの議論には入っていきたくないが、例えばこの1─3月のGDPの数字についても、数年後に最終確定する数字がどういう風になっているであろうかということを考えた場合、指摘されているゲタの数字自体も実はそれほど磐石かどうかもよくわからないという気がする。いずれにせよ、はっきりしていることは、景気は減速し、それがさらに減速しているということは非常にはっきりしている。それからゲタをどういう風にみるにせよ、足元かなり成長率が低くなってきているということは、それはおっしゃる通り。そういう状況をどういう言葉で表現するのがいいのかということは、もう少し回数を経て判断していきたいと思うが、今回この時点はさらに減速しているということを伝えることが一番、景気判断として適切であると判断した」
「来年度にどうすれば成長率上がるメカニズムなのかについては、先ほど交易条件の悪化が足元の景気減速の主因だと申し上げた。一方、原油価格については高水準で横ばいで推移すると申し上げた。景気悪化をもたらす主因が交易条件の悪化・変化なので、したがって、交易条件の悪化が止まればマイナスが消えるということで、成長率を押し上げる要因になってくる。その意味で、これが唯一のメカニズムではないが、原油価格についてどのような想定を置くのかということは非常に大事。もし、原油価格が予想に反してどんどん上がっていくということになると、この面からは交易条件は悪化するので、成長率を下げる要因になる。ただ、交易条件の悪化の裏には、必ず交易条件の改善した国があり、現在、ロシアや中東に対する日本の輸出はものすごい勢いで増えている。世界全体として必ずお金は回っているので、最終的には内需の減少と輸出の増加とをバランスよく見ていく必要があるが、いずれにせよ、先ほどの質問については、交易条件の更なる悪化はここでは織り込んでないということだ」
──期待インフレ率を日銀はどうやって把握していくのか。
「大変重要な問題だ。各国の中央銀行がこの課題に取り組んでいる。これをみれば予想インフレ率がわかるといううようなものはない。
直接アンケート調査で聞くというものには、家計の予想インフレ率に対する調査がある。四半期ごとに日銀が行っている生活意識調査でみると、毎回、確実に物価が上がっていると答える人の割合が増えている。方向はわかるし、数字を聞いても一応出てはくるが、消費者物価指数に比べて非常に高い数字なので、数字の水準自体は、必ずしも予想とぴったり対応しているわけではない。エコノミストの予想には短期・長期があるが、中央銀行が内部で調査しているのと比較的似ている。それから物価連動債。ただこれは、物価連動国債と普通国債からブレーク・イーブン・インフレーション・レートを計算するわけだが、両者の主要流動性の差の変化も映し出しているので、はたしてこれが予想インフレ率だと言えるかというと、日本に限らず他の国でも、なかなか自信を持って言えないというのが正直なところだと思う。そう考えると、相対的に信頼できる指標として、賃金の動き、その設定態度が浮かびあがる。間接的にインフレ予想が反映されている可能性はもちろんある。ただ、こちらもいろいろな問題があるから、賃金をみていれば必ず分かるというものではない。いろいろな指標を合わせてみるわけで、この点で日本銀行は今後さらに努力していきたい」
──当面の金融政策運営の5番目について、文言を変更した時に市場が反応するリスクをどう考えるか。
「5番目の文書は4月の展望リポートで採用した文書であり、4月末以降この文書を使っているということ。それ以前は、若干、異なる文書だった。昨年秋の展望リポート以前は『経済・物価情勢の改善度合いに応じて金利水準を調整する』と書かれていた。それは、その時の経済・物価情勢に照らして、そうした金融政策の先々の運営方針が望ましいと思ったため、ある程度の方向性を示した。今回は、景気と物価について、先ほど申し上げたようなリスクがあることに照らし、こうした表現がいいと判断した。従って、この文書がずっと続くわけではなく、どこかのタイミングでは変わり得る」
「(文言を変更した場合の市場の反応については)先行きの政策の考え方について、何がしか中央銀行が発信していく以上、その時点でマーケットに何がしかの反応があることは避け難い。しかし、われわれが意識しているのは、金利を上げる、下げる、変化させないということではなく、中央銀行がどのような行動原理で動こうとしているか、ということをできるだけ説明していく。その上で、毎回、経済・物価のデータをわれわれがこう解釈しているということを説明し、できるだけ滑らかに金利が予測できるようにしたい。そのような意味で、われわれ自身の説明が目的に沿ってうまく運営されていれば、比較的、ショックは小さい。ただ、この1年間の欧米の金融市場を考えてもそうだが、突然、大きなショックが襲うことはある。大きなリスク要因が顕在化すれば、そこで大きく経済の姿は変わってくる。その時には、経済の姿の変化に合わせて政策が急に変わることもあり得る。それは、経済の実態がそうである以上、政策もそうであるべきと考えている」
──きょう配布された「当面の金融政策運営について」というステートメントに、「景気下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まる」という文があるが、金利引き上げへの意識が強まったのではないか。
「この文言自体は4月の展望リポートでも入っていた。政策委員がここにきて、より利上げ方向に変化したかというと、そうではない。あくまで、さまざまなリスクの1つとして出ているということ。具体的には、現在実質短期金利が非常に低く、コールレートが0.5%、消費者物価が1.5%で、単純に計算するとマイナス1%となる。勿論、現在の上昇がずっと続くというわけではないだろうが、単純計算では実質金利は非常に低い。一方、経済の潜在力は1%の半ばから後半と想定できる。実質短期金利が持つ潜在的な景気の刺激力は大きなものがある。ただ、さまざまな景気の下押し要因があるなかで、それが目に見える形で力を発揮するわけではない。逆に言うと、そうした諸々の下振れ要因が消えてくると、今度は潜在的に持っている力が発揮されてくる。2003年以後の世界の経済金融情勢を考えてみると、物価上昇率はそれほど高くない、しかし経済成長率は高いという中で、低い金利水準が続いている。結局、いろんな形で不均衡が蓄積していって、それが最後に巻き戻している状態に今ある。03年以後の世界経済が示すように、長く蓄積していくリスクについても、当然中央銀行としては意識しないといけない」
──日本の金融機関の住宅債券の保有状況と米金融市場の混乱が日本に与えるリスクについて。
「日本の金融機関の外債投資の個別銘柄について定期的に把握しているわけではないが、大手の金融機関を中心にGSE債についても相応の保有があると承知している。日本の金融機関が抱えている有価証券、クレジット投資の動向については注意深くモニターしていきたい。米金融市場の動揺が日本に与える影響については、日本の金融機関の直接の与信は欧米の金融機関に比べると相対的に限られている。実額としては、そこそこの金額は出ているが、比較するとそれほど大きくない。日本の金融機関の期間収益力、自己資本で十分に対応できる水準と思う。直接的なエクスポージャーよりも金融市場がどのように変化していくかに注目している。今のところ、その面でも大きな動揺は生じておらず、相対的に安定していると思う。いずれにせよ、注意して見ていきたいと思っている」
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